- おとな 1 -

先生のバイバイ


中学生のとき、とてもきれいな女の国語の先生がいた。いつも凛としていて気軽に近づけない雰囲気だった。

成績が急降下して元気のないとき、僕は偶然、帰り道で先生と一緒になった。緊張して何も話せないまま、しばらく先生と一緒にあるいた。

横断歩道で別れてから、道路のむこう側で先生が大きな声でこう言ってくれた。「バイバイーイ、元気だせよっ!」。先生が女の子のように僕をはげましてくれたとき、涙が出てとまらなかった。

(アルバム/男/30歳)

モドル

ソース焼きせんべい


小さいころ、土曜日がおこづかいの日でした。妹と二人で50円ずつをにぎって、いつも近くのお好み焼き屋へお菓子を買いに行きました。

あるとき妹が、自分の50円だけでは買えない90円のおまけ付きキャンディーをじっと見つめていました。ほしいのかと聞くと、無言でうなずきました。何となくかわいそうだったので、そのキャンディーと5円のせんべいを1枚ずつ買うことにしました。

お金を渡すとき、おばさんはこちらをじっと見て、そのせんべいを焼いてソースをぬってくれました。本当なら焼いてもらうにはさらに5円かかるけれど、無言でそうしてくれました。つぎの土曜日から、無愛想でこわかったおばさんが少しやさしくなりました。

(自営業/男/35歳)

モドル


- おとな 1 -

おとな 目次

カテゴリー
△up
戀 トップ

(c)Office Pocket